FRAGMENTS

ART WORK
陰翳礼賛

Production details

個人的なアートワークとして「陰翳礼賛」というムービーを制作しました。タイトルは谷崎潤一郎が 1933 年に創作した随筆「陰翳礼讃」からとっています。この随筆は西洋の文化や価値観が入ってくる前の、今日と違った日本の美の感覚、生活と自然とが一体化し、真に風雅の骨髄を知っていた日本人の芸術的な感性を陰翳をテーマに論じたものですが、この随筆が記されてから約 90 年がたち、日本人の価値観も大きく変化した中で、改めて現代の日本の陰翳に潜む美を探してみました。

First step

個人的制作とはいえ、自分のイメージを可視化するために絵コンテを制作しました。絵コンテやリファレンス画像で、どうすれば日本の陰翳に潜む美を見つけることがイメージを膨らませていきました。制作した絵コンテ(イメージ)をパズルのように組み合わせていき、わずかにストーリー性を感じる構成にしていきます。

Process

だいたい内容が固まったらロケハンを行います。陰翳がテーマなので印象的な影を足を使いながら探していきます。普段歩いている場所でも、影という視点で見ていくと面白い発見があったりします。谷崎潤一郎の随筆では西洋的な電灯や明かりは本来の日本人の美意識とは反するという趣旨のことが書かれていますが、現代の日本は人工的な電灯だらけです。ただ、それも「陰翳礼賛」を現代版に再構築する上で面白いポイントかなと思いました。

撮影は人物撮影パートと実景パートに分け、実景は一人で孤独に撮影。人物パートは出演者1名スタッフ2名という体制で撮影しました。人物撮影では複数の箇所を1日でまわり、かなりハードスケジュールになりましたが、最終的には使用していないカットも多く、多く撮っていいものを選んでいきました。個人のアートワークなので縛りがない中で自由に試行錯誤し、楽しみながら撮影することができました。

Final image

そして、グレーディングを経て映像が完成!谷崎潤一郎が書いた随筆より90年の時がたち、当時とはすっかり変わってしまった日本社会や日本人の価値観の中で、改めて美しい現代の「陰翳」を私の視線からに見つけれたかなと思います!谷崎潤一郎は現代の日本を見たらどう思うのでしょうか。